霧の海
季節の変わり目になると海水温が低いのに空気が温まり過ぎてしまう。すると海水温と空気の温度にギャップが起きて朝には霧が発生する。浜から眺めると海が視界ゼロの分厚い白いベールに覆われる。 その中をゆっくりパドリングして沖に出て波を待つ。 10m先くらいしか視界は確保できない。そしてその白いベールの中から波が浜でブレークしようとぬっ、とコブのように続々と現れる。 それらが角度の低い朝日に照らされて深緑というか青いオレンジ色というか物凄く綺麗な色になって見えることがあるのだ。 それは衣を纏った高位の僧侶が静々と寺院の中を歩み行くようにも、また海で行方知れずになった亡霊たちが陸地に戻ろうと足掻いているようにも見える。 それはなんというか壮大な夢を見ているようでただただ見惚れるしかないのだが自然というものは元々そういうものなので我々は多分夢を見ているのだ。