オレの左前頭部には10針分の大きさの傷がある。これは土星に行ってきた証なのだ。おっこいつとうとうきたかという事なのだろうが先ずは語らせてくれ。
趣味でサーフィンを続けている。あれは8年くらい前の秋の海で起こった。いつもの様に千葉のシークレットポイントで仲間と入っていた。天気もとてもよく暖かく無風のコンディションでサイズもモモコシで面も綺麗。幸せなコンディションだった。サーフィン動画を見るとサーファーの足首とサーフボードつなぐストリングを認めるだろう。これはリーシュコードと言ってサーファーとボードをつなぐ命綱だ。これは2つの意味があって1つはデカイ波に巻かれた時にボードが救命道具となるのだがその時に役立つ。もう1つはボードから落っこった時にボードはそのままカッ飛んでいく。サーフボードのノーズはとんがっているので他のサーファーにヒットするとあたりどころが悪いと目の玉が飛び出て失明したり頭が切れたりしする。なのでリーシュコードがボードの動きを制限して他人を傷つけないという役割があるのだ。
でその時はロングの仲間がリーシュコード無しで波乗りをしていた。オレはゲット(沖に向かってパドリングする事)していたのだがそいつが波に乗ってきていきなりコケた。かなり予想外でかつリーシュコードに繋がれていないボードがカッ飛んできてノーズがオレの左前頭部に当たった。すると。。。
まずは痛みは無く衝撃があった。オレは仰向けになって水の中をゆっくり沈んでいく。身体が動かない。軽い脳震盪だろう。でもウェットスーツを着ているからいつかは浮かび上がる。大丈夫だ。あれなんでこんなに落ち着いているんだろうな。あっでもちょっとづつ水が口の中に入ってきたな。マズイかもしれない。なんて事を考えている。海の底から海面にキラキラと日の光が飛び散ってる様を眺めているわけでとても平和な気分だった。
すると頭のど真ん中に真っ白な光の柱がブチ上がってオレの目の玉があっという間に成層圏を離脱して地球がピンポン玉みたいに小さくなっていく。とにかく物凄いスピードだ。そのままオレはソフトボールくらいの大きさの惑星を見下ろしていた。惑星にはリングがあってそのリングは物凄い数の小さな輪が集まって構成されている。そしてリング自体が回転して音を出している。「これ土星じゃねえか?土星だっ」と思った瞬間逆モーションが物凄いスピードで起こってオレは海面に顔を出していた。
ぶつけた仲間が近寄ってきた。オレはそいつに「オレ土星に行ってきたよ、オレ土星に行ったんだよ」と言ったらしいがオレは全く憶えていない。
慌ててボードに這い上がるとデッキにボトボト真っ赤な血が派手に落ちてくる。誰のだ?と思って頭に触ると自分の血だった。そのあと病院行って麻酔打って縫合してもらったって傷自体は快方に向かっていく。
だが自分自身であの体験を振り返ってみるとあの時オレは絶対的実感でソフトボール大の土星を見下ろしてリングを観察していた。あの感覚については疑いようがない。しかしながらこのようなスピリチュアルっていうのだろうか体験をするのは生まれて初めてだったのでうまく受け入れられなかった。
そこでオレはリングの廻っている音を聴いていた事を思い出した。youtubeで<sound ring saturn>と検索するとボイジャー1号が太陽系を離脱する時に各惑星の音をひろって送信しているアーカイブがあった。
そのファイルをビクビクしながらクリックしてみたらそれはオレが聴いた音だった。。。。
土星旅行は結構イーズイだったな。
オススメだお!